ほとんどの投資家表面利回りに騙されている、注目すべき計算手法とは

Young businessman hiding head in the sand

昨今の不動産投資はインターネットの普及もあり、依然と比べて非常に容易な物件選びができるようになりました。しかし、その物件資料には表面利回りの表示のみで、投資後の利回りについては綿密に計算されていないのが実情です。今回は、表面利回りのみで物件選びをして損をしてしまった失敗談を紹介します。

表面利回りで選んで失敗した投資家の体験談

大家H(仮名)さん
・40代/男性/東京都在住
・一人暮らし

Hさんは都内の会社に勤める、ごく一般的なサラリーマンの方です。不動産投資は未経験でしたが、約800万円の貯金の内、300万円程度の自己資本を入れて、区分マンションから手堅く投資を始めようと考えていました。
しかし、都心の区分投資では、思う様な利回りの物件が見つからなかった為、勉強のためにと一棟物件の仲介を専門とする不動産業者のセミナーに参加しました。

そこでは、「手持ち金が無くても投資できます。今は金利が安いので借りた方が得ですよ。」「区分投資では、資金を入れないと黒字では回りません。又、一棟は複数戸を所有しますので分散投資の効果が得られますので、安定性が増します。」「弊社の推奨物件は他の業者の調査が及ばない、地方の優良物件に厳選しているので、ライバルも少なくむしろ優良な投資先ですよ。」などなど、聞こえの良い業者の勧誘文句を受け、元来人の良いHさんは、いざとなれば損切すれば良いだろうと、岐阜県岐阜市の木造アパート(築25年)をオーバーローンで購入しました。

購入後、2年程度は入居者が出ることもなく、比較的に順調に回っていました。しかしREITバブルの終わりと共に金融機関の貸し渋りが始まり、不動産価格が値下がりし始めた頃、入居者の退去がちらほらと出始めました。
それに伴い、室内の原状回復費用と新規入居者の募集費用で、これまでに稼いだ2年間分の家賃は、全て出ていきました。Hさんは幸いにも、これまでの家賃収入を使わずに貯蓄しておいた為、自身の貯金から多くを支出することには至りませんでした。

しかし、投資から4年が経過した頃、Hさんは税金の負担がとんでもない金額になっている事に驚きました。建物の減価償却が終わった為です。これまでの家賃はローン・金利の支払いや修繕費用等で既に残っていない為、自身の貯金から支払いました。
そこで、取引をした不動産業者に連絡をしようと、当時の担当者に名刺を取り出し電話をするものの繋がりません。また、ホームページを探したところ既に閉鎖されており、掲示板サイトによるところでは既に廃業済みとの事実が分かりました。

Problems in the business

Hさんは、仕方なく別の不動産業者に売却を含めた相談をしにいきました。しかし、そこで初めてHさんにとってあまりにも辛い事実が提示されます。
「申し上げにくいのですが、この物件はH様のようにこれから資産拡大を目指す方が購入する物件ではありません。既に複数の物件を所有されている投資家の方が、リバランスなどの為に購入する分には良いのですが…。そもそもですが、今は融資が厳しいので岐阜市の物件ですと、買手がかなり絞られてしまいますね。
それと、H様はオーバーローンかつ長期でローンを組まれていらっしゃいますので、これまでに銀行に支払った返済金の多くは金利部分で、元本の返済が進んでいません。ですから、売却しようにも残債を上回る価格は望めませんので、銀行の抵当を外すためには多額の資金を入れる必要があります。」

Hさんはすっかり、肩を落としました。表面利回り10%を超える筈の物件が、蓋を開けてみるとマイナス利回りのアパートだったということです。一括返済に及ぶ資金を持ち合わせていないHさんには、赤字のキャッシュフローの物件にも関わらず、持ち続けるという選択を選ぶほかありませんでした。

その後は、私生活の余計な出費を抑え、纏まった金額とは言えないまでも繰り上げ返済を数度こなし、昨今の金融緩和相場にも助けられ損切ではあるものの無事に売却。Hさんは、「最初から保有後の事を計算しておけば、こんな事にはならなかったね。」と振り返ります。

表面利回りで選ぶと、なぜ失敗するのか

Hさんの事例からも分かる様に、不動産投資は表面利回りで測りきることは出来ません。特に気を付けたいのは以下の点でしょう。

◆表面利回りに含まれていない内容◆

空室率が計算されていない

地域によっては、空室率が常時50%以上の物件もあります。そもそも賃貸物件を探している人が殆ど居ないケースも!甘い見積もりに注意。

ランニングコストが計算されていない

特に、地方物件は家賃の絶対値が低いので、経費割合が高くなることに注意。

家賃の減価率が計算されていない

延々と同じ賃料で貸せる訳ではなく、不動産投資は長期に及ぶので見通しに目途をつける必要があります。まして気をつけたいのは、新築~築浅の頃に入居して更新を続けている入居者が退去してしまうケースです。退去後は、相場賃料で貸さざるを得ませんので、事前に調べて見通す必要があります。

将来のリセールバリューが計算されていない

長期に及ぶ不動産投資では、地域の変化によっても再販価格が変わります。その意味では、購入(入口)の時点から売却(出口)までのシナリオは描いておく必要はあるでしょう。

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投資先を選ぶ際に、先ず行うべき2つの計算

また、投資先を定量的な観点から選ぶにあたっては、「投資効率」と「安全性」の両面から指標を見る必要があります。
その際、以下の指標を用いることが一般的です。

◆IRR(Internal Return Rate):投資効率を示す指標

本来の意味合いとはやや異なりますが、分かり易い表現で言えば、「投下資本を複利何%で回し続ける事ができるのか」といった、投資効率を測る為の指標です。
特徴としては、賃料の減価/空室/経費や売却価格を織り込んだ計算をしています。

例えば、IRR7%の物件の場合は約10年の運用で投下資金が2倍まで増える計算となります。

◆DCR(Dead Coverage Ratio):安全性を示す指標

BTCF(税引き前キャッシュフロー)の安全性を図る指標です。 実収入に対して、「潜在収入(GPI)」「経費(OPEX)」「空室損」「実効収入(EGI)」「返済金額(ADS)」について計算し、実投資にあたっては税引き後の手残りについても計算する必要があります。
その際に、課税所得と相殺できる主なコストは、減価償却と金利(返済金額の利息部分)です。

また、安全性を測る意味では、金利変動や空室率アップなどのリスクシナリオについてストレステストを行う手もあります。

適切な準備が必要

不動産投資とは言葉を変えると、不動産の「経営」と言えます。経営である以上、やはり勢い任せの舵取りでは、目標収益に無事辿り着くことは難しいでしょう。成功する為には、適切な準備を行い、適切なパートナーと組み、適切な行動を取る必要があります。